がん!
鈍重な扉が音をたてて開かれる。
扉の前に立っているのは漆黒のマントを身に纏った青年…
「陽の子か」
「誰だオヌシ」
「鬼城のモンだ。オマエを迎えに来た」
「…知らぬ」
「どうでもいいさ」
にやりと笑うと口元から尖った牙が覗く。
援兵が声をあげる。
「いたぞ!こっちだ!」
「チ、鼻が利く」
扉の回りを槍を構えた兵がズラリと並ぶ。
その中央に年老いた鎧に身を包む男が一歩前にでる。
「鬼城の悪魔よ、その子に触れてはならぬ。今なら危害は加えない。立ち去れ」
雄々しい声が石の空間に響き、吸い込まれる。
青年はふうっと天井を見上げて独り言の様に続ける。
「奪うなって言われたら」
老人に視線を戻す。声に笑いが含まれる。
「無理にでも奪いたくなるものさ」
「かかれ!」
合図で兵が前進する。
青年は子供を部屋の隅に放り投げて正面から向かう。
腰の剣が抜かれる。
斬り付ける鋭閃をかわし、一歩退く。そしてわずかにをおいた間を一瞬で前につめる。
素早く細い剣が端的に鎧の腕の関節に突き立つ。
「ぐわ!!」
「じいさん、鎧の関節部位の設計はこんな合成金網状のガードじゃ足りないよ。さもないと…」
鎧に足を掛け、軽く上に跳ぶ。剣が関節から弧を描いて回る。
ビキキキっ
「っだぁ!!」
円心力で剣が抜ける。吹き出る血に脱力し、兵が叫び腕を押さえ込む。
「腕…がぁっ……」
パチン!
指がなる音がこだまする。すると兵の腕の傷がスッと消える。
「…あぁ?」
「人間同士の戦いじゃ腕もっていかれるぜ」
幻影……
「あ…悪魔め!!」
巨大な兵の剣と交わり、火花を散らす。
がちがちがちっ
青年がわずかに押しまける。
「ひゅぅ、バカ力だな」
「ほざけ!!」
そのまま押し込まれ、青年の剣が弾かれて床に音を立てて落ちる。
ふらつく青年の姿を見て兵は歓喜の声をあげ、そのまま前に飛び込んでくる。
「殺った!」
その兵の額に鉄製の筒先が押し付けられる。
チキ…
「何!?」
バァン!!
マントから引き抜かれた拳銃が硝煙をまき散らす。
「銃だ!」
「さ、下がれ!!」
「遅いなぁ」
バァンバァンバァン!!
「こいつは幻術は効かないから…なぁ…」
「どうした…いつになく必死じゃねぇか」
青年はうつぶせに倒れた老人の横に立つ。老人は毒気付きながら怒鳴る。
「その子は…出すな!」
「命令するんじゃねぇ!」
鎧を蹴り、老人が転がる。
「ぬ…ぐ…」
「爺殿…」
子供は老人を見て震えている。
「イカン…世界を見ては…まだ時ではない…」
「私は…私は……」
青年は子供を持ち上げ、抱え上げる。
「いい風だ……」
塔の窓から飛び上がる。風が吹き、カラダが軽く浮く。
ほとんど自由落下に近い飛び方をしている。
青年は子供の顔をみる。泣くか叫ぶか。
しかし子供は月夜が照らされる風景に見入っている。
「これが…世界」
涙があふれてこぼれる…嬉しそうに…静かに呟く。
「綺麗だ…」
涙のせいか…青い瞳が浮いて見える…
こいつ…手を離しても自分で飛んでいきそうな気がする…
「何だ…オマエは…」
城につき、青年は腕を押さえ込む。
「……つ」
「ケガ…したのか?」
「少し肉を削られただけだ。お前を喰えば治るさ」
「私を…か?」
顔を持たれ、子供がバランスを崩して半身が転ぶ。
「オレは何人も喰ってきた鬼人だ。オマエはオレの食料なんだよ」
「聞いたコトがある…ヒトを食らう鬼人がこの近くに存在すると…オヌシが…」
考える様に視線は下を泳ぐ。
「…食べるのか…」
「そぅだよ。死ぬんだよ。だから逃げるなら今のウチだ」
ぱっと手を離して背中をむける。
「暴れろよ。反抗したっていいさ」
「うぬ…」
子供はのそのそと起き上がり…胸元のボタンに手にかける。
「……」
プツンっ
する…と服が静かに床に落ちる
「なっ!?」
意外な行動に驚く。
月光に光る小さな肢体と金の髪…
一瞬目眩がした…
「なに…してるんだよ」
「私を食べるのであろう?服など邪魔であろう」
バン!と扉を叩かれる。青年は子供を睨む。
「オレのコト可哀想だとか思って同情してるつもりか?」
「そんなつもりはない。食べられるなら食べられるまでだ」
「…!」
首を押さえ付けて床に押さえ付ける。
「ハラワタ引きずりだして生きたままくってやろうか」
「痛そうだの」
「………」
「できればあまり痛くない方が良いのだがな」
「死ぬんだぞ?」
「食べられたらそうなるな」
ならなんで…
「なんでそんな顔してんだよ…」
「………ヤメダ…」
青年は首から手を離してカラダを起こす。
「気分が悪い。オマエを喰うのは明日にする。せいぜいやり残したコトでもしてろ」
「…清麿」
「気やすく呼ぶな!」
子供がびくりと肩を揺らす…
本気で…怒る青年の目は紅く闇を照らす……
「その名は捨てたんだ!二度と口にするな!!」
子供が見開く目に気付いてか…青年は目を手で隠してうつむく。
「下の部屋に入ってろ。言っとくが城には番犬がウヨウヨしてるからな。逃げ出そうなんて思うなよ」
『清麿…オレ達トモダチだよな?』
『勿論。どうしたんだよ、今さら』
『オレ…さ、もうすぐいかなきゃいけないんだ』
『どこに』
少年は明後日の方向に指をさす。
『あっちの方』
悲しそうに振り返り、笑う。
『オレはかえってくるからからさ、その時にお前に居て欲しいんだ』
『構わないよ。待っててやるさ。』
清麿は少年の拳に拳をぶつけて言う。
『早くかえってこいよ。さもないと名前とか忘れちまうからな』
『ありがとう…』
清麿の首に白い腕がまわる。
『オレからプレゼント…受け取ってくれ…』
首のすぐ横で歯がひかる……
長く生きすぎて…記憶があやふやになってきてる……
もう…あいつの顔は思い出せない……
大切なトモダチ……
そう…たしか…そう……
長い廊下を歩き、耽る……
あの名前を聞いて…久しく思い出す…
あんな子供に思い出させられるとか思わなかった…
部屋の前に立つ。
きぃ…
部屋の隅の寝具のまん中で小さくなっている子供…
このカラダになって…血に餓え、肉を欲した…
上手い訳じゃ無い……
だが喰わずにはいられないこのカラダ……
名は捨てた。ヒトではいられない。
時ばかり過ぎていく………
子供に影がかかる…
子供は目をあけ、カラダを起こして青年をみる。
青年は…言葉をなくす…
「………」
「何だ?やはり喰うのか?」
「…ちがう……何でもない…」
寝具の角に腰を下ろす。
何しに来たのか…理由なんて思い付かない……
子供はまん中から隅の方に這ってよってくる。
「のう?」
「なんだ……」
「清麿は人間だったというのは本当か?」
「…忘れたよ、そんな昔のコト…もぅ800年間ずっと悪魔だ」
「私も似た様に言われておる」
にこっとわらいながら、変なコトを言い出す。
「嘘つけ。金髪に碧眼、どっから見ても国の貴族だろうが」
子供はやはりか、といった顔で肩を下げて頭を横に振る。
「違うのだ…この目は嘘なのだ」
もそもそと目を擦り、何かを目からとる。
青く光る硝子体。
そしてゆっくりと目をあける…
髪の色に負けないくらい光る。
「金の眼…」
「私は…生まれながらのあそこに幽閉されていた。切り札だと…」
陽の子という存在
王族
隠す理由
切り札……
「……そうか…最後の砦か。」
頭の中にらしくない言葉が浮かぶ。だが表現的にはぴったりだ。
途端、笑いがこみ上がる。
「くくく…あぁ!それでか!可笑しいと思った!兵の攻撃が激しいハズだ。」
額に手を置き、高く笑う。
子供はきょとんと目をまるくしている。
笑い過ぎで涙を少し浮かべながら青年は子供を指差した。
「自分の価値が分かってねぇって顔だな。シナリオはこうだ。
この国は近い将来の王族の政権制が崩壊する。おそらくあと3年程度だな。
民衆が暴動を起こすだろうさ。何、たまにあるハナシだ。
しかし今近隣との仲違いがよくないからな。侵略を防ぐ為に協議会がすぐに再生されるだろうさ。
そこで国を立ち上げる際に必要なのは再生の象徴。崇拝すべき人物。ソレがおまえだ。
それだけ大層な目と髪だ。その容姿なら誰だって神々しく見えるモンだ」
「だからそれまでアソコにずっといるハズだったんだな。
世界の姿を見せずに荒んだ歴史ばかり教え込まれて他んじゃねぇのか?
そっちの方が再生期に寛大でどんなケースもマシに見えるからなぁ!」
「外に出られたのは清麿のおかげだ。私はむしろ感謝しておる」
「だが鳥籠からでた途端にオレのハラん中だ」
「もう十分だ。私をアソコから出してくれただけで…」
静かに…笑う……
「思い残すことはないのだ」
『還ってくるから…』
「ガキが…」
「ヌ?」
「オマエみたいな世間知らずがいるおかげでオレたちみたいなヤツが苦しむんだよ!
死ぬだの還るだの望みのない言葉を口にするな!何も知らないクセにさも知ったかぶりをするな!ハラ立つ!」
「………」
「あークソ…昔のコト思い出す…無駄に怒って血圧が上がるしよ…くそ」
「ふぇ…」
大きな瞳に涙がじわじわと浮かび、たちまちこぼれる。
ぎょっとする。
「お、おい?」
「初めて…怒られた…のだ…」
震える声で続ける。
「いつもいつも…皆…私のコトを避けて…死んだような目でみてて…話し掛けてくれるのも…ほんの少しで…叱る…など…誰も…うっぅ…」
「お…おい?」
「うっ…ぅえええ〜」
「ッな、泣くな!怒鳴っただけじゃねぇか!泣くな!」
「ふぇぇぇ〜」
「だーっ!うるせぇ!喰うぞこらぁ!」
「ぎよまろぉ〜」
「呼び捨てすンな!」
「え゛------------------ッ」
「ふぐス、すンっ」
「泣いたら寝る…赤ん坊かよ」
あれから1時間。あり得ないくらいの大音量で泣き続けた。
耳の奥がじんじんする。
逆に静かになった部屋はキーン…という錯角音が耳の中で響く。
マントをしっかり握りしめて寝息をついている…
「ったく…」
『アソコからだしてくれただけで…』
あんな暗い部屋でひとりきりで……
「どんな…キモチしてたンだよ…」
他人を分かろうとするなんて無駄なあがきだ
生まれた瞬間から価値観は存在している
感覚なんてわからない
だれがどれだけ幸せでどれだけ不幸せか分らない位に……
だからこうして……オレがいる……
ヒトの憎しみの対象として存在している
そしてこいつのように崇拝の象徴として創られた存在もある
他者を完全に理解するコトなんて出来るわけがない
あぁでもない こうでもない ちがうだろ? ちがわないのか?
追い詰めれば詰める程自己否定の連続
泥沼に顔を突っ込みたくない
辛い想いは十分だ
でもこいつのコトをわかろうとしている自分がいる
矛盾していてアタマが痛い……
「ん…ぅ…」
もそもそとカラダをすりよせてくる。
「はぁ…」
マントの留め金を外し、カラダを包んでやる。
黒い衣のなかで視覚的に更に小さく見える。
あぁ…
800年生きててこんな疲れたのも多分始めてだ……
喰いモンに変な情が湧く
いつだって…喰える…
そう…明日喰おう………
だから…
「今は眠れ……」
[END]
『鬼城』
原画は太夫様のトコロの現在(200311)TOP絵でございます。
そして太夫様に捧げます☆
あまりの素敵な絵に妄想ワールド大展開!!
なんか…ガッシュワールドではなくなったので青年と子供でまとめました。
本当に色々痛い作品。
でも楽しかったー!!!!
こんなカッコつけた麿、笑うしかないです。
麿の基本:『ヘタレ』→『カッコつけたがり』→『でもやっぱりかなりヘタレ』
ヘタレ麿上等★大好きだぜ!
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